鐘の話




Real_or_TreatのbadBadBAD‼で追加した鐘の話です。


これは声劇や声の投稿、また物書きの設定等々自由に使って頂いて構いませんが、勿論自作発言はNGです。

そして出来ればcredit等でどこかに 「horrorfantasy」もしくは「星喰(hoshikui)」と書いていただけたら嬉しいです。

※強制ではありません。

※またcococmmu内ではお題として出してますのでそちら投稿の際は全然書かなくても大丈夫です。 ※この話を使った際に起きた様々なことに関して作者は一切責任を負いません。











作:星喰(hoshikui)






昔々、一人の旅人が町を訪れていました。
町を回っていると、住人は皆沈んだ表情をしていました。
そんな中で歩いた街中もどこかどんよりと暗い色に染まっているかのように見えてきて…そんな寂れた町を目の当たりにした旅人は自分まで同調しそうになりました。
けれどそれを振り払い、旅人は自らの得意とすることで町と住人に色彩と笑顔を取り戻そうとします。




旅人が得意とすること―――それは音を作ることでした。
旅人は静かな町の一角で、一音、響かせます。
その音に反応した住人の一人が彼の元にやってくると、こう言いました。




"それはどうやって鳴らしているんだい?"





旅人は音の鳴り方を住人に教えると、もう一回音を響かせました。
その音につられてまた一人、一人と住人がやってきては何度も音を鳴らしていきます。
やがて一角の全てが住人で埋まるほどになってくると、旅人は住人一人一人に別の音が鳴る道具を渡し、一斉に町に響かせようと提案しました。
そして旅人が合図をすると――皆の片手に持った道具達が一斉に町中に響き渡ります。



雲も突き抜けるような暖かいその音は、住人の心に光を灯し、町に彩りを与えてくれました。 
住人たちが賑わい、その心に光が宿ったことを旅人が嬉しく思っているとその中の一人が旅人の元へやってきてこう言いました。





 "旅人さん。この町を、私達の心をいつも照らしてくれるようなこんなにも暖かい音をずっと響かせることは出来ないでしょうか?" 



"貴方は町から町へ歩いていく旅の方。ですがこんな奇跡をもたらしてくれた貴方がここからいなくなってしまっては私達の心もこの町もまた元通りに寂れてしまう" 



"どうかお願いです。お望みとあれば、金も、食糧も、この身も捧げます。この町をずっと明るく照らし続けられる、暖かなその音を私達にいただけないでしょうか"






旅人はこの町に来るとき、一週間くらい滞在したらまた別の町に行こうと考えていました。
けれどこうして住人達の必死の訴えを前にすると、出ていく前に何かをこの人たちに残したいと旅人は強く思いました。
旅人は、住人達の願いにこう答えます。






"ああ、分かったよ。けれど一つだけお願いがある"  


"これから僕が作る音は、君たちと同じ、寿命のある音だ"


"だから、もしも音が途切れてしまったその時は、何もしないで、その音が幸せな眠りにつけるように君たちが見守っていてほしい"



"君たちは"ずっと"と願っているようだけれど…いずれ、僕にも音にも終わりは絶対にくる"


"でも忘れないでほしい。僕に音が作れるように、君たちにも音は作れる"


"光をもっと増やすことだってできるんだ"


"だから……どうか僕の作った音が消えてしまっても、また新たな音を君たちが作って"


"そうして僕の音以外でも君たちが光が溢れる町にしてくれるのなら、僕は君たちの願いを叶えたいと思う"








そんな旅人の言葉に、一人の子供が弱々しくこう呟きました。







"出来るのかな……私なんかにも、作れるのかな……"








その言葉に旅人は別の言葉で問い返します。









"君は、砂遊びが好きかい?"


"?"


"どんどん崩れていく砂を見て、新しく作ることを面倒くさく思ったりするかい?"


"…崩れちゃったら、もう元には戻せないから………"


"どうして? 確かに元には戻せないけれど、新しいものは生み出せるじゃないか"


"人は、頑張り続けても、作り続けても、失敗がいくらでもつくものだ" "けれどそうした失敗を繰り返していると、新たな発見をすることもある"


"新たな発見?"


"僕はそれをここで見つけることが出来た。うん、思った通りだ。君たちの笑顔や笑い声は見ていてとても豊かな気持ちになる"


"君たちに沈み陰ったような表情や、暗い言葉は似合わない"


"けれど高らかに笑い、表情を明るくさせると天にも負けないくらい…この音にも敵うくらいに君たちは輝きだすんだ!"


"人は、楽しい気持ちが生まれれば自然を口許を緩められる"


"楽しい気持ちを生む為には、僕らが自分で自分の為に自分がやりたいことを精一杯探さないといけない"


"その探す過程すら楽しいと思いたいから、人は言葉を交わし、喜怒哀楽を繰り返し、そうして幸せな気持ちをたくさん生み出していくんだ"


"難しいことを言ってしまったような気がするけれど、ようするに僕はね、"


"なんか、という言葉は心の中だけで使ってやってほしいということだ"



"口に出すと禍が生じる、ということもある。言葉は自分の気持ちを代弁してくれるけれど、それは時として自分自身を傷付ける呪いにもなるんだ"


"君は自分が気になった疑問をわざわざ僕に、相手に聞いた" "本来ならそれは周りの大人が先に訊ねるようなことで、特に君のような幼い子供なら周りに任せて何も言わない子がほとんどだ"


"だけど君は聞いてきた。それは君が自分の疑問を自分で解決しようとしている証拠で、君の中の"勇気"という部分が君に対して働きかけた結果なんだよ"


"君は、君が思っている以上に、"なんか"という言葉を使わなくても立派なくらい素晴らしい人だと僕は思う"


"だからといって今こうして見守っている君らに作れない、 なんてことはない" "さて、何かを作るときに一番大事なことがなんだか分かるかい?"



"優れた知識でも器用さでも素早さでもない。 ――そう、それは好奇心だ"


"君らは今よそ者の僕が響かせたこの音に好奇心をくすぐられて近づいてきた。君らにも、好奇心がある。それは何でも作れる証拠だ"


"だから作ろう。もしも失敗したのなら途中からでも繕ってしまえばいい。新たに作ってもいい。そうしてこの町を光でいっぱいにさせてみないか"










旅人の言葉に、一人、また一人と頷きを返し、笑い合い、やる気を見せつけ、そうして人々の声が空に天高くあがっていきます。


その後、旅人は大きな大きな鐘を作りました。


教会にあるような綺麗なものではありませんが、それはそれは大きな鐘でした。


旅人はその鐘が出来上がるのと同時にまた町を離れ、旅を続けました。


そんな旅人の元へ自分達の音が届くように、町の住民は一年に一回、旅人が町から離れたその時刻に鐘を鳴らして旅人へ感謝を伝えて続けています。


住民達はこの鐘を町の光とし、その鐘の寿命が尽きるまでいつまでもいつまでも暖かな音と共に暮らしましたとさ。
    





おしまい。




horrorfantasy

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